週末は晴れ

自転車でスケッチしながら北海道を一周するのが夢

【本】本数珠つなぎ 4冊目 『モンテ・クリスト伯』

 

横溝正史『蝶々殺人事件』「モンテ・クリスト的」という表現が出てきます。仏の小説モンテ・クリスト伯の主人公の性格なのでしょう。でも読んでいなければどういう意味かは分かりません。文脈から探るしかないのです。多分、時間に正確ということでしょうが、果たして正解なのか。

 

mono93.hatenablog.com

 

ということで、本数珠つなぎ4冊目はモンテ・クリスト伯

さっそく図書館で予約したが全7巻。そうでした。長い小説でした。
徳川家康』全26巻を二回読んでいるので7巻ぐらい読めなくはありません。でも面白くなかったら辛かろう。最近、根気がなくなってきたことだし。

決めたことだ、覚悟するしかなかろうと、ページをめくると、あなた、もうハラハラドキドキ。数ページで主人公の運命から目が離せなくなりました。いや、数ページで主人公がこれから陥るであろう苦難を思うと胸が苦しくなり、早々に読むのを止めようと思いました。もう読んでられない。ダメだよ、逃げろと叫びたくなります。8時だョ!全員集合の世界ですな。
巌窟王との邦題で子供向けに訳されている小説であり、読み継がれる名作でもあるので、大雑把な結末は想像がつきます。読まずに終わらせることもできましょう。などとドキドキ読み続けていたら止まらなくなりました。

で、7巻一気に読破。読了ではありません。読破です。読破しました。いや、面白かった。さすがに世界で一番おもしろい小説と呼ばれるだけのことはあります。今まで読んでいなかったことを後悔しております。何度も書店で目にしましたが、全七巻に気圧されて手にすることはありませんでした。早く読んでおけばよかった。

現代の小説からすると、漫画チックで稚拙な感じがします。ツッコミどころ満載です。リアリティより空想、憧れに重きを置いてあります。息苦しいほどの現代の社会にあっては、差別的、非人権的な描写もありましょうが、面白いんですもの。昼メロのようであり大河ドラマのようであり、ともかく面白い。繰り返しますが面白いのです。

なぜこれほど面白いのか。それはいくつもも小説の要素を持っているからではないでしょうか。冒険活劇のジャンルではありますが、冒険、裏切り、陰謀、復讐、恋愛、不倫、同性愛、海賊、山賊、歴史、社交界。面白そうな要素がいっぱい詰まっています。面白くて当たり前。生真面目な道徳を語ればこれでええんかというところもありますが、とにかく楽しもうという娯楽小説なのです。

ただ困ったことが一つあります。登場人物を覚えきれない……。脇役と気を抜いていたら、重要人物として突如再登場したり、誰と誰が恋愛関係にあって、敵対関係にあるのか、社交界の青年達がぞろぞろ出てきて誰が誰だか、もう何が何だか。メモを取りながら読まないといけませんな。
あと、ナポレオン時代の仏の歴史や仏貴族の階級に通じていれば、もっとわかりやすく楽しかったことでしょう。

こんな面白い小説を読む機会をくれた横溝正史に感謝しております。
そのきっかけとなった「モンテ・クリスト的」の意味ですが、こんなモンテ・クリスト伯の台詞がありました。

「いかがです。同じ日、同じ時刻にとおやくそくしては?」と、伯爵が言った。「あらかじめ申し上げますが、わたしは、時間には〇違いのように正確でして。」

モンテ・クリスト伯は約束通り同じ日、同じ時刻に現れるのですが、二三秒遅れてしまい謝罪しています。他にも時間と約束を守る男であると自負するモンテ・クリスト伯の台詞が出てきます。
そう、「モンテ・クリスト的」とは、時間に正確、約束を違わない、という意味だったのです。スッキリしました。

さて、本数珠つなぎの5冊目ですが、モンテ・クリスト伯→巌窟→牢屋→脱走→映画『大脱走』ということで、大脱走にしましょう。

 

 

 

 

mono93.hatenablog.com