週末は晴れ

自転車でスケッチしながら北海道を一周するのが夢

【本】『偽のデュー警部』ピーター・ラヴゼイ著(ハヤカワ・ミステリ文庫) ~コツは喋らせること

小学生の頃、瀬戸内海フェリーで神戸と小倉を往復したことがあります*1。まだ新幹線が九州まで走っていない頃でした。
当時、工場経営で裕福だった祖父母は一等の個室、安サラリーマンだった父、母、私は二等の雑魚寝でした。瀬戸内を走るので波も穏やかで、一泊二日のちょっと楽しい船旅でした。

高校の修学旅行は沖縄でした。マンモス校でしたから、サンフラワー号貸切です。船で沖縄に行き、船をホテル代わりに使います。
往路は船底の雑魚寝、復路は一等の個室。行きと帰りで上下を入れ替えるという荒業の部屋割りでした。
なんて書くと楽しそうですが、この船旅をきっかけに船に弱くなりました。船長も初めてという大時化にあったのです。
時化にあったのは往路でした。船底です。進行方向に対して横に寝ていたので、波に乗り上げる度にゴロゴロ転がる。大きなうねりに乗り上げたあと、船が落ちるときにふわりと身体が浮く感覚。そして船が叩きつけられる音。全員が船酔いで、洗面所がえらい事になったのを思い出します。
それ以来、船が嫌になりました。豪華客船への憧れはあるりますが、船旅をすることはないでしょう。

 


さて、このミステリーは大西洋を横断する豪華大型客船が舞台。タイタニックもどきの沈没の話に始まり、何故かチャップリンが出てきます。豪華客船の沈没のあと、なかなか話は進まず、殺人事件が起こらない。いよいよかと思えば、なんだかどこかで聞いたことがある話の展開になってきました。
おそらくは、こちらが本家なのでしょう。本作を読み始めたのは、有名所の作家が参考にしたとか言っていたからです。古典といってもいいのでしょう。
果てさてどうなるのだろうと思えば、後半はコミカルな展開に。伏線も収まるところに収まり、大円団と思えば大どんでん返し。いや、面白かった。ツッコミどころはあるものの、よく練られています。読んで損はありません。

さてさて、偽の名探偵デュー警部はどうやって難事件を解決するのか。そこが読みどころなんですが、あっさり解決してしまいます。コツは喋らせること。営業でも家族でもなんでもそうですが、相手に喋らせることが一番です。名探偵は聞き上手なんですね。
 

*1:ちょっと記憶が曖昧。