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【本】本数珠つなぎ13冊目『クリスマスのフロスト』

 

本数珠つなぎ13冊目は、警察小説つながり。

『クリスマスのフロスト』R.D ウィングフィールド 著(創元推理文庫

 

推理小説、ミステリーは色々読んできました。何人もの探偵の名推理を楽しませてもらいましたが、探偵役の警官ですぐに名が出てくるのはこのフロスト警部だけです。
ということで『クリスマスのフロスト』二回目です。

なんせ登場人物が面白い。ディケンズを思わせます。英国作家はキャラクターの作り方が上手いのでしょうか。アガサ・クリスティも上手いですよね。

このフロスト警部ですが、いわゆるADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder、注意欠如・多動症)のように思われます。それが、モジュラー型警察小説(複数の事件が同時に発生するミステリー小説)にあっているのでしょうか。混沌とした中に本人だけは秩序を持っている、そんな感じがします。

フロスト警部はとにかく行き当たりばっり。次々起こる犯罪を、犬も歩けば棒に当たる方式で解決していきます。犯人がフロストの前に躍り出てくるのです。でも、その出てきたものの裏にあることに気が付くからこそ、フロストは事件を解決できるのです。見事な観察力と記憶力。そして見たものを結びつける推理力。混沌の中に秩序を見い出す。やっぱり名探偵ですね。迷探偵のように見せといて名探偵だ! と思わせてくれます。でも、次のページでは、やっぱりあんたは迷探偵だよ、と落とす。もう振り回されます。

いわゆるブリティシュ・ジョークというのでしょうか、ブラック・ジョークといいましょうか、とにかくフロスト警部ジョークは下品お下劣です。
しかし、そこは上手く書かれています。あ、この先は聞きたくない、と思うジョークは、登場人物たちが阻止してくれます。時にはフロスト本人が止めてしまいます。
そもそも英国風ジョークは好きではないので楽しめません。でも、フロストのジョークに対する周りの反応が好きです。そして悪態をつくように、自分をわざと貶めようとするかのように下品なジョークを始めるフロストが魅力です。
なぜ彼はそうするのか、してしまうのか。彼の人生の哀しみがそうさせるのか、と同情させといて、ひっくり返すフロスト。本当にあんたはどうしようもないやつなのか好いやつなのか。もう翻弄させられます。

さて、本数珠つなぎの14冊目アガサ・クリスティ『ねずみとり』にしました。珍しくマレット署長に誉められたフロスト警部の台詞に『ねずみとり』が出てくるのです。

「まあ、大したもちあげようだったよ。『ねずみとり』以来最高の推理かというような口ぶりだった。」

偶然に事件を解決してしまったフロスト警部を、署長が「『ねずみとり』以来最高の推理」と褒めたたえているのです。ということは、『ねずみとり』には最高の推理が出てくるわけです。フロスト警部の迷推理の前には、史上最高の推理だったわけです。読まずにはいられません。

さあ、史上最高の推理とはどんな推理なのでしょう? 楽しみです。