週末は晴れ

自転車でスケッチしながら北海道を一周するのが夢

【本】本数珠つなぎ 7冊目『史上最大の作戦』

 

大脱走 英雄〈ビッグX〉の生涯』の次は戦争映画原作つながりで本数珠つなぎの7冊目は史上最大の作戦『The longest day』です。

史上最大の作戦コーネリアス・ライアン著

ビッグXことロジャーが指揮した大脱走1944年の春のことでした。その3ヶ月後、連合軍はノルマンディーに上陸しました。それ以降、ドイツ軍は衰退し一年で無条件降伏することになります。

 

mono93.hatenablog.com

 

ノルマンディー上陸作戦は成功し、連合軍はフランス解放の足がかりとします。作戦は大成功だったのですが、史上最大の作戦を読むとそうは思えません。空挺隊も上陸部隊も計画とは違う場所に降り立ち、上陸したのです。空挺隊は、沼地や海に落とされ、溺れ死んだ者も多数いました。上陸部隊に至っては、上陸する前に攻撃を受けることなく船ごと沈んだ兵士もいたようです。映画プライベート・ライアンで描かれたように悲惨な戦場となったのです。ノンフィクションですので淡々と書かれていますが、暗澹たる気持ちになりました。
もし自分が兵士であったら。上陸艇の先頭に立たされていたら…………。臆病者なので誰かの死体の影に隠れて死んだフリをするかもしれません。死んで花実が咲くものか。

ノルマンディー上陸作戦の端緒は連合軍にとって燦々たるものでしたが、ドイツ軍の見通しの甘さに助けられました。大きな被害を出しながらも成功し、ヒトラー自決の始まりとなりました。俯瞰的に見ると意義のある戦いでしたが、個々の兵士にとっては不幸の始まりであり、人生の終わりであったのです。

戦争って何だったのでしょう。大脱走にも書かれていましたが、ヒトラーへの憎悪が兵士たちが戦うエネルギーになっています。イスラム圏とキリスト圏の戦いも相手への憎悪の上に成り立っています。戦争の始まりは利害の衝突でしょうが、憎悪無くして戦争は維持できないのでしょう。その憎悪を維持し拡大するためにプロパガンダがあるわけで……。

難しい話は向かないので閑話休題

今、『あなたの体は9割が細菌』アランナ・コリン著(河出書房新社を読んでいます。そこにノルマンディー上陸作戦が出てきます。1944年は抗生物質が量産された年でした。抗生物質ペニシリンが登場するまで、人は小さな傷から感染症になり死に至ることが多々ありました。抗生物質は人を感染症の死から救ったのです。ノルマンディー上陸では沢山の負傷者が出ました。彼らの命を救ったのが抗生物質だったのです。1944年は細菌にとっても転換の年であったのです。

さて、史上最大の作戦という邦題は、映画『The longest day』の公開のときに付けられたそうです。当時、映画会社の広報であった映画評論家の故水野晴郎氏の命名でした。規模においてノルマンディー上陸作戦を越える作戦は未だないそうです。
原題の『The longest day』は、ドイツの名将「砂漠の狐」ことロンメル元帥の言葉から付けられたようです。ロンメルは大西洋沿岸防衛の責任者でした。ロンメルは連合軍の上陸は避けられず、その日は両軍にとって一番長い日になるだろう、と語ったといいます。その一番長い日にロンメルはベルリンにいました。妻の誕生日にあわせベルリンに帰っていたのです。もし、ロンメルが現場にいれば、ドイツ軍はノルマンディーを防衛できていたかもしれません。

ということで、本数珠つなぎの8冊目は半藤一利著の『日本のいちばん長い日 運命の八月十五日』にしました。連合軍とドイツにとって一番長い日がノルマンディー上陸作戦の日、D-dayであったならば、日本のいちばん長い日に何が起こったのでしょうか?