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【本】本数珠つなぎ12冊目 『寝ぼけ署長』

本数珠つなぎ12冊目は時代小説つながりで、

『寝ぼけ署長』山本周五郎著(新潮文庫

 

時代小説で一番好きなのが山本周五郎です。時代小説というジャンルを考えなくても好きな作家です。新潮文庫から出ている周五郎の小説はほとんど読んでいます。クリスティの赤い背表紙周五郎の水色の背表紙を見ると手が延びます。

今回、山本周五郎の時代小説を読むに当たって『寝ぼけ署長』を選びました。しかし、厳密には時代小説と呼んでいいのか、と思いますが。
本当は周五郎が描き出す「日本人」を読みたくて周五郎得意の侍が出てくる作品を読みたかったんです。でも『寝ぼけ署長』を選んでしまいました。
この『寝ぼけ署長』は、周五郎では珍しい現代ものの探偵小説です。現代といっても舞台は戦前。もう、資本主義の世界に浸かった時代です。忠義、人情が色あせていく時代の話です。

周五郎の描く戦国、江戸の人々は忠義、人情の世界に生きています。現代人から見ると、己の人生を犠牲にして何が幸せか、となるでしょうが、近世では当たり前のことだったのでしょうか。
『無私の日本人』にも次のように書いてありました。

江戸の後期は庶民が輝いた時代
倫理道徳において端然としていた時代

真実はともかく、周五郎の描く侍や市井の人達は本当に気持ちのいい人達です。
その周五郎の世界を戦前とはいえ現代に持ってくると、とたんに嘘くさく見えてきます。『寝ぼけ署長』も周五郎の世界そのものですが、何となく胡散臭い。寝ぼけ署長を寝ぼけ奉行に変換して、舞台を江戸にすると、自然と頭に入ってきます。でも、奉行ではなく署長だとそうはならない。あくまで私個人の感性ですが。
今回読んでみて、その思いは強くなりました。周五郎は江戸時代、侍の時代に限ると。『寝ぼけ署長』より町奉行日記』だと。
まあ、密室殺人は周五郎の柄ではないですね。

さて、『寝ぼけ署長』は懐の深い署長が主人公です。警察小説とも言えましょうが、やっぱり違いますかね。
警察小説はいろいろ読んできましたが、記憶に残っている警官といえば、フロスト警部だけです。他は覚えてません。探偵はポアロからマープル、金田一耕助と諸々出てきます。でも、警官ですぐに名が出るのはフロスト警部だけ。

ということで、本数珠つなぎ13冊目『クリスマスのフロスト』で決まりです。